JUDGES, COMMENTS
YouFab Global Creative Awards 2019 全受賞作品を発表致します。 43カ国、285作より選出された20点の受賞作品をご覧ください。
インドネシア共和国
イスラエル
日本
ロシア
タイ
メキシコ
マレーシア
By 林 園子 (一般社団法人ICTリハビリテーション研究会)/濱中 直樹 (ファブラボ品川)
By Studio PLAYFOOL
By ANDREAS REFSGAARD, JOHN FERREIRA & ALEJANDRA MOLINA
By Rosie Broadhead
By ノガミカツキ
By Cy Keener, Sam Holmberg, Dave Eldenburg, Justine Holzman
By Yuemin Huang
By Richard Vijgen
By Gerardo Nolasco-Rózsás
By Taavi Suisalu
By Signal compose (Hiroshi YAMATO, Yoshitaka OISHI, Kota TSUMAGARI, Ryo MORITA)
By Henrik Nieratschker
By 高嶺格
編集者
審査会がはじまってすぐ、審査員のバルトさんが「プレイスメイキング」ということばを議論のテーブルの上に置いてくれたことが、今年の「YouFabアワード 」の審査の行方を大きく変えた。 「Fab」という概念も、そして本アワードも、大きな曲がり角にあるのではないかという問題意識は、昨年に審査委員長を引き受けたときからうっすら感じていたことだった。デジタルとフィジカルの境界が融解し一体化しているなかで、その横断性を評価することへの困難。テクノロジーそのものよりもそれを扱う制度やコンテクストこそが問題となっているなか、テクノロジーの利用が前提とされていることへの違和感。あるいは「作品」という概念と「Fab」ということばが内包しているはずの理念との乖離と分断。そうしたいくつかのもやもやに「プレイスメイキング」ということばがかたちを与えてくれた。 今回のアワードは、お題が「コンヴィヴィアリティ」だったことから、身の回りの環境を再発見・再定義するような作品が多く寄せられることが当初から想定されていたのだが、そこでいう「環境」のなかには、身の回りの「人」、つまりは「社会」や「コミュニティ」といった要素も当然含まれることになるであろうことについては、うかつながらそこまで気を回してはいなかった。ところが応募作品を覗いてみると、そうした「作品」が少なからず寄せられていた。それはグランプリを獲得したコミュニティプロジェクトだったり地域のワークショップ活動だったりといったものだったのだが、正直、それらの作品をどのように扱ったものか審査会の日まで決めかねていた。 バルトさんは審査会の本当にしょっぱなで「プレイスメイキング」すなわち「場所づくり」がいかに「ファブ的」な行為であるかを説き、それを積極的に評価すべきだと柔らかい穏やかな話し方で語った。そして、それが自分の迷いをきれい晴らしてくれた。 ファブというととかくわたしたちは、それを「ものづくり」の話として理解してしまう。そしてそうすることによって、その「もの」をスタティックな完成品として見てしまい、そうすることでそのものを「作品」として捉え、「完成度」という尺度において見てしまう。けれども「ファブ」は本来、動的なもので、ゴールではなくむしろプロセスやアプローチに価値が置かれ、普遍であることよりも可変であることのオープンさに目を向けるものだったはずだ。わたしたちはファブを「ものづくり」から解放して、もっとも広義な意味において新しい場所や制度、人と人の関係性の「つくりかた」といったところにまで広げて考えてみるべきだったのだ。そして、そういう視点を手に入れてみると、先にあげたようなデジタルとフィジカルといった枠組や、テクノロジーそのものを価値としなくてはならない軛などは、きれいに氷解していく。 今回の審査会は、おそらくYouFabアワードの、新しい飛躍に向けた大きな転換点になると思う。そこに、自分が敬愛してやまない3名の審査員、レオンハルト・バルトロメウスさん、松村圭一郎さん、林千晶さんと立ち会えたことはとてもスリリングなことだった。それはささやかな小さな体験ではあるけれど、2020年代の社会が今後どのように推移していくのかを象徴的に表す、大きな意味を持つものになるのではないかという予感がある。"
YouFab2019 総評
若林恵
編集者
審査会がはじまってすぐ、審査員のバルトさんが「プレイスメイキング」ということばを議論のテーブルの上に置いてくれたことが、今年の「YouFabアワード 」の審査の行方を大きく変えた。
「Fab」という概念も、そして本アワードも、大きな曲がり角にあるのではないかという問題意識は、昨年に審査委員長を引き受けたときからうっすら感じていたことだった。デジタルとフィジカルの境界が融解し一体化しているなかで、その横断性を評価することへの困難。テクノロジーそのものよりもそれを扱う制度やコンテクストこそが問題となっているなか、テクノロジーの利用が前提とされていることへの違和感。あるいは「作品」という概念と「Fab」ということばが内包しているはずの理念との乖離と分断。そうしたいくつかのもやもやに「プレイスメイキング」ということばがかたちを与えてくれた。
今回のアワードは、お題が「コンヴィヴィアリティ」だったことから、身の回りの環境を再発見・再定義するような作品が多く寄せられることが当初から想定されていたのだが、そこでいう「環境」のなかには、身の回りの「人」、つまりは「社会」や「コミュニティ」といった要素も当然含まれることになるであろうことについては、うかつながらそこまで気を回してはいなかった。ところが応募作品を覗いてみると、そうした「作品」が少なからず寄せられていた。それはグランプリを獲得したコミュニティプロジェクトだったり地域のワークショップ活動だったりといったものだったのだが、正直、それらの作品をどのように扱ったものか審査会の日まで決めかねていた。
バルトさんは審査会の本当にしょっぱなで「プレイスメイキング」すなわち「場所づくり」がいかに「ファブ的」な行為であるかを説き、それを積極的に評価すべきだと柔らかい穏やかな話し方で語った。そして、それが自分の迷いをきれい晴らしてくれた。
ファブというととかくわたしたちは、それを「ものづくり」の話として理解してしまう。そしてそうすることによって、その「もの」をスタティックな完成品として見てしまい、そうすることでそのものを「作品」として捉え、「完成度」という尺度において見てしまう。けれども「ファブ」は本来、動的なもので、ゴールではなくむしろプロセスやアプローチに価値が置かれ、普遍であることよりも可変であることのオープンさに目を向けるものだったはずだ。わたしたちはファブを「ものづくり」から解放して、もっとも広義な意味において新しい場所や制度、人と人の関係性の「つくりかた」といったところにまで広げて考えてみるべきだったのだ。そして、そういう視点を手に入れてみると、先にあげたようなデジタルとフィジカルといった枠組や、テクノロジーそのものを価値としなくてはならない軛などは、きれいに氷解していく。
今回の審査会は、おそらくYouFabアワードの、新しい飛躍に向けた大きな転換点になると思う。そこに、自分が敬愛してやまない3名の審査員、レオンハルト・バルトロメウスさん、松村圭一郎さん、林千晶さんと立ち会えたことはとてもスリリングなことだった。それはささやかな小さな体験ではあるけれど、2020年代の社会が今後どのように推移していくのかを象徴的に表す、大きな意味を持つものになるのではないかという予感がある。"