LION AWARD
Hack the Natural Objects.
Category : GENERAL
By GADARA (日本)
ガダラによるプロジェクト「Hack the Natural Objects.」で生まれた石型のインターフェイス。“自然物”にセンサーなどの人工的な機能を組み込み、傾きによって音量や明量などのアウトプットをコントロールします。自然と人工が“MERGE”する日常、というコンセプトをプロトタイピングした作品です。
形や使いやすさではなく、自然物が持つ特性を活かしたデザインを行うことで、体験中心のプロダクトデザインに転換するため
3Dプリンターを使うことで石の触感に限りなく近い外装を制作した。その中にArduinoでジャイロセンサー、バッテリーを入れ、傾ける角度によって、音量や光量を調整できるシステムを開発した。
素材:PLA アクリル絵の具で着色 Arduino、ジャイロセンサー、バッテリー
Size:100mm×70mm×50mm
柳原一也
清水惇一
竹腰美夏
油木田 大祐
JUDGES, COMMENTS
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宇野大介
ライオン株式会社
研究開発本部イノベーションラボ所長何でもなく、いつもそこにあるもの。
いつもは見逃しているもの。
自然が創り出した造形。
実は私も自分で木を削りだしたキーフォルダーを30年以上使っています。
使い続けていながらも、その手触り感や愛着を忘れていました。
この作品の、自然の造形を活かし、人工的な機能を付けることにとても共感するとともに、この世界がもともと持っている自然とヒトが作ったものとのMERGEという、僕たちが持っていなかった概念に改めて気づかせてもらいました。 -
林千晶
株式会社ロフトワーク 代表取締役この作品を見た時に、思い出した景色がある。
今夏、リノベしたての京町家に宿泊した時のこと。
和紙や檜、小石などが粋にあしらわれている空間に
突如、艶かしく光る紫の物体が目に入った。
バルミューダのドライヤーだった。
単体でみれば、抜群に完成度の高いアイテムも、
自然で洗練された色彩の中で、馴染めずにいた。
「身の回りのインターフェイスを自然物にすることで、
日常の中にやすらぎをもたらしたい」という挑戦は、
IoTやアディティブマニュファクチャリングの
環境が整ってきた今だからこそ、有効性を感じる。
同時に、日本的な美しさへの回帰にも思われた。
各地の風土から生まれ生活に根ざした道具には、
健全な美が宿っているという民藝の思想。
そうか。これは新しい民藝への挑戦なんだ。 -
福田 敏也
博報堂フェロー/Chief Creative x Technology Officer 大阪芸術大学デザイン学科教授 株式会社トリプルセブン・クリエイティブストラテジーズ代表取締役 FabCafe 共同設立者新しい道具を買うと新しいハードが増えて、次の新しい道具を買うとまた新しいハードが増える。新しいもののおかげで便利になっていることは間違いないけれど、なにやらたくさんのハード類が部屋にあふれているのはどうかと思う。そう感じている人は多いのではないだろうか。「Hack the natural objects」。2つの理由で興味深かった。1.ハードのインターフェースはその存在感を隠し、ストレスを消す方向へと進化する。という未来を予見させるという理由。2.センサーを中心としたパーツ群が高度化コンパクト化していくと、そのモジュールさえ埋め込めればハードはなんでも良くなる時代がくる。という未来を予見させるという理由。
ほんとにすごいテクノロジーはきっと、その存在を感じさせないところまで進化する。彼らの開発がそのユニークな未来を見せてくれるものへとさらにさらに発展することを祈っている。 -
藤村昌平
ライオン株式会社
研究開発本部イノベーションラボ主任研究員ライオン賞のテーマ「MERGE- 仕事と暮らしが溶けあう未来」は、懐が広く、多様なアイデアを受け入れられる土壌、これが本アワードを通じて感じたことである。10年後の2027年の生活を想定してテーマを置いているが、今から10年前はスマートフォンの普及前夜に当たる。この10年間の変化を考えれば、次の10年の暮らしや働き方がいかに多様性に富むかが分かる。応募作品に自然との調和をコンセプトにしたものが多くみられたのも、10年単位で変わりゆく大きなうねりのようなものを感じた。我々が選んだ「Hack the Natural Objects.」は、自然物が持つデザインを活かしながら、機能を付与して生活に溶け込ませるというものである。生活の中で多様な接点を持つライオンだからこそ、製品としての機能美だけでなく、いかに自然に、いかに違和感なくよりよい暮らしを実現していけるのか、という問いを提示してもらえたと感じている。さて、この難解な問いにどのように応えようか。