FINALIST
かつて風景の一部だったものに、風景をプリントする
Category : STUDENT
By 岩崎広大 (日本)
土地の記憶をモチーフに、昆虫の身体に昆虫のいた土地の風景写真をプリントした、新しい風景写真を作りました。 浮かび上がる写真(銀塩写真)から、メディアの特性に関係なく塗布される写真(インクジェット写真)が発明され、写真がメディアから開放された時代でありながら、次なる写真表現が目指した時代が、写真から物質性を無くしたディスプレイで鑑賞される写真となった現代に対するアンチテーゼにもなる作品です。
紙にプリントされた風景写真を見たとき、人が鑑賞するのは主にイメージのみです。紙には注意を向けません。なぜなら、紙と風景は別々に出来上がり紙は風景の成り立ちに関与していないからです。イメージと紙は異なる記憶を保有しているにもかかわらず、風景写真は人に土地の記憶を強く想起させます。では、プリントされるメディアも、土地に関係したものであった場合、人が想起させられる土地の記憶はより強いものになるのではないか?と考えました。 選ばれたメディアである昆虫は、その土地で長い間繁殖を繰り返し、独自の生態や形態を獲得してきました。それらは土地特有の気候によって形成されています。風景は様々な木々や山並みによって成立しています。これらも降水量などの気候により形成されています。この点で、二者は同じように土地の記憶を共有していると考えました。
昆虫を採集し、採集地点で風景の撮影を行います。採集された昆虫を標本にし、撮影された風景をphotoshopで調整します。 標本から羽を一旦取り外し、UVプリンターを用いて昆虫標本の羽にその昆虫が生まれ育った土地の風景をプリントします。
サイズ:250mm x 200mm x 70mm (WxHxD) 重量:300g 使用素材:昆虫標本、標本箱 使用技術:UVプリント
JUDGES, COMMENTS
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Julia Cassim
京都工芸繊維大学
KYOTO Design Lab. 特任教授少々堅苦しいプロジェクトのタイトルは横に置いておくとして//別として、このアイデアはみごとな簡潔性をもっています。この手や目を働かせてシンプルな道具を使うということはプロジェクトの必要性を気付かせてくれましたが、この技術の芸術性や人間のスキルなどというものはまやかしだと伝えているのです。ほかにどうやって、蛾にうしなった習性を取り戻させることができるのでしょう?我々は、このプログラムの発案者が、地球との関係や我々が失ってしまった景観について言及するという非常に難しい内容に取り組む野心を心から称えます。(246字)