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TRUSTLESS LIFE

TRUSTLESS LIFE

加藤 明洋

Category : GENERAL
By 加藤 明洋 (日本)

作品について

この作品は、近未来にブロックチェーン技術が実現するであろう未来の社会を、人と人とが対面でプレイするボードゲームとして表現することにより、多くの人々がその可能性と課題を想像できるゲームである。プレーヤーは、現在の社会においては大きな要素であるにも関わらず目に見えない「信用」が、コミュニティの中で決めたルールに従って数値化され、その変化を記録される社会における「人生ゲーム」を体験する。 この社会においては、主に仕事をベースに信用度が上下するようになっており、信用度が上がればゲーム中のさまざまな行動がしやすくなる。また、過去に失敗をしたとしても、地道に信用度を取り返えせば再チャレンジすることができ、きちんと仕事をしていさえいれば、引きこもっていても虐げられない。このように、ブロックチェーンによって個人の信用が担保されることにより、それぞれの目的に応じた多様な生き方が自然に実現する社会なのである。

制作の動機

現代社会が抱える無力感、閉塞感は私たち自身のコントロールが私たちに与えられていないことに起因する。決められた暗黙のルールや同調圧力、出る杭は打たれるといった多様性を認めない社会がこの先も続くのだろうか。私は物心ついた頃から存在しているインターネットに大きな期待を抱き、その延長に生まれたブロックチェーン技術が社会を大きく変えるものだと感じている。そしてブロックチェーン技術は、不完全な民主主義から私たち自身へのコントロールを取り戻し、多様な生き方を自然に実現する社会への可能性を持っていると信じている。あらゆる契約をコードとしてのせ、主体なく実行できるプラットフォームとしてのブロックチェーンが社会の基盤となったとき、私たちの生活はどのようになっているのだろう。その体験したことがない想像が難しい社会を、「人生ゲーム」の形で疑似体験することで、その未来の可能性と課題を考える機会を作りたいと考えた。

制作方法

本作品に至るまでにブロックチェーンをテーマとしたボードゲームのプロトタイプを4作ほど制作し、それぞれテストプレイやフィードバックを得ながら改良を重ねた。その中でブロックチェーンをゲームで使用するアプリケーションの裏側に導入したものもあったが、この技術自体が直接体験できるわかりやすいものでないため、なぜこの技術が重要なのかを感じさせることが難しかった。そのためボードゲームとして身近な人生ゲームをベースとして、少し未来の社会を体験させる方策を考案した。現代ではまだ想像できないけれど、もしこんな仕組みがあったら実現するといった、今の社会の延長にあって枝分かれした1つの可能性を描き体験することで、この技術の重要性を体験から感じてもらおうと考えた。ボードゲームとアプリケーション、コンセプトとゲームバランスなど全ての要素を成立させることはとても困難だったが、1つの形として提案できたことは感慨深く思う。

仕様

ゲーム盤(木材) 45(w) x 45(d) x 6(h) (mm)、ゲームカード 3種60枚、アプリ

JUDGES, COMMENTS

  • 宇野大介
    ライオン株式会社 
    研究開発本部イノベーションラボ所長

    ブロックチェーンのような、最先端で難解な故に得体のしれないデジタル技術を、手触り感のあるボードゲームに仕立てた点、更にボードゲームながらもスマホを駆使してゲームを進める仕様に、大いに興味を持ちました。見た目の完成度の高さ、ヘキサゴンを使ってボードゲーマーの心をくすぐりつつ、ブロックチェーンによる社会の変化を実感させてくれそうなところが、とても気に入っています。今回のYoufabにて、様々なコミュニケーションの形を見せていただきましたが、この作品もまた違ったコミュニケーションの体験が出来そうです。何はともあれ、一度これで遊んでみたいですね。

  • 藤村昌平
    ライオン株式会社 
    研究開発本部イノベーションラボ主任研究員

    今後、ヒトの価値は何によって測られるのだろうか?これが「Trustless Life」に刺激された私の感情である。このゲーム上では、肩書や生まれは関係なく、活動実績とスキルで評価され、行動が制限される(できることが増えると表現したほうが好ましいかもしれない)。社会全体に適応されるルールは一つであり、ログは分散型で管理される。ブロックチェーンを通して未来を見ると、この世界も一つの答えであるとは思う。一方で、過去の行動記録から信用によって評価するのではなく、未来への期待や可能性を信頼という形で評価する世界を「MERGE」を通じて創り出してみたいものである。