Category : GENERAL
By DANIEL DE BRUIN (オランダ)
世界初のアナログ3Dプリンター、“THIS NEW TECHNOLOGY”は、皮肉なデジタル3Dプリンターの引き立て役、と言えるでしょう。 3Dプリンターの魅力は素早く効率的にモノを作成することですが、3Dプリンターで作られたプロダクトは「手作り」にはなりません。それらは技術が産み出した単なる「製品」に過ぎないのです。
モノをつくるワクワク感を味わい「自分で作った」ことを証明するために、私はアナログの3Dプリンターを開発しました。このプリンターを使えば、手作り感をおぼえながら、個性溢れる昔ながらの陶器を作ることができます。約10kgの重りを吊るすと、その重りが重力に引かれる力を動力として、3Dプリンターが動き始めます。この重りのおかげで、自分自身が製作のプロセスに関わることができます。製作しているのは電力ではなく、自分自身なのです。
http://www.danieldebruin.com
金属、アルミニウム、ナイロンを使って作られました。CADソフトやCNCマシンは、作る過程で使用していません。
田中浩也
田中浩也
Fabは、「デジタルで新しくてカッコイイ!」というかつてのような単純な価値観だけではなく、「古さと新しさ」「アナログとデジタル」「グローバルとローカル」「制作と批評」といった基本的な問題を、われわれに考え直させる契機にもなっています。この作品の場合、そうした問いやまなざしを、「自作の工作機械をつくること」に結集していることで、3Dプリンターやレーザーカッターといった、新しく便利な道具との距離を考え直すメッセージを強く発信しています。Fab2.0のコンセプトを批評的に展開する模範的な作品です。
Natalia Arguello
Natalia Arguello
効率重視のデジタル技術が、いかにして製作物との個人的な結びつきを保つためのインスピレーションとなり得るかを見ることができ、非常に驚きました。 このアナログ3Dプリンターは、製作物と製作者との間の断絶を認め、デザインに関わる私たち全員の目を覚ましてくれました。素晴らしい作品です。
Nicolas Lassabe
Nicolas Lassabe
このアナログ3Dプリンターのプロジェクトは、様々な可能性を実現させました。高度な技術を使わなくてもイノベーションは起こせること、重力のみでエネルギーを作ることができること、金棒を曲げてプログラミングができること、プラスチックをセラミックで代用できること、電気を使わずとも美しい機械仕掛けで機械が動くことです。 私はこのプロジェクトによって、物作りの手法というものを考えさせられました。また、このプロジェクトは、3Dプリンターが数世紀前から発明可能であり得たことの証拠にもなるかもしれません。 木製のサングラスを作るために虫眼鏡を使ってレーザーカットを行ったマーカス・カイザー(Markus Kayser)の作品を思い出しました。http://www.markuskayser.com/work/sun-cutter
Singh Intrachooto
Singh Intrachooto
この作品は、非常に精巧に作られているうえ、また触覚を使うものです。コンピューター化やデジタルファブリケーションであふれた時代に、このようなアナログタイプの3Dプリンターが作られたのは素晴らしいと思います。この3Dプリンターで作られた作品も美しいです。
Kyle Li
Kyle Li
本作のエントリーを初めてみたとき、タイトルは抽象的で、説明文も物足りなく、その新しさや世界初のアナログ3Dプリンターであることを上手く伝えられていないという印象でした。ですが、装置の洗練されたデザインに目を奪われ、より詳細をみていくことにしました。このプリンターは、2Dの輪郭を作るところから3Dにプリントするまでのデジタルな製作過程を物理的に具現化したものです。動画にはアナログ3Dプリントの過程がよく記録されています。複雑に連動していくシステムには、メイカーの一人として非常に興奮させられました。
四方幸子
四方幸子
アナログで3Dプリンターを制作する、というアイデアそして実際の成果に魅了された。デジタル・ファブリケーションが「Fab」と同義語的に扱われ、Fabがますます高度化し洗練されたプロダクトを志向する中、電気を使わず重力や重さという物理的な力で稼働するシステムの実装は、驚きと批評性に満ちている。電気を使用せず、可視性に満ちたメカニズムで3Dの造形が形成されるプロセスは、所要時間も含め、機能性や合理性では測れない素朴かつ実体的なFabの原点を見せてくれる。生み出されるプリミティブな土器は、「機械ではなく私の手による作品である」と作者が語るように、古来から人間の手で生み出されきた土器をFabを通して延長するものと解釈できる。遊びや手作り精神とともに、Fabの現状に一石を投じる取り組みとして評価した。