Category : GENERAL
By Behnaz Farahi (アメリカ)
もし、私たちの服が周囲からの視線に対し察知・反応できるとしたら? 人と接する際になかなか感じにくい「視線」を、身体で“感じとる”ことができたとしたら? Caress of the Gazeは、3Dプリント技術によって作られた相互作用的な衣服で、周囲の人々の視線を認識し、まるで本物の生き物のような反応を見せてくれます。
私たちの皮膚は常に運動しています。伸縮を繰り返し、内部・外部からの様々な刺激によって変化し続けるのです。刺激となるのは気温や湿度だけでなく、恐れや興奮、怒りといった感情も含まれています。生き物の皮膚の無意識的反応のように、もし、私たちの服が形を変化させ、外界との接点となるような、人工的な「肌」としての役割をもてるとしたら?
そうして始まったこのプロジェクトは、3Dプリント技術、SMAアクチュエータ、視線追跡技術を導入し、衣服の開発だけでなく私たちの周囲との関わり方について考える機会を与えてくれました。デザイン、アート、テクノロジーやロボット技術のかけ橋となる変形構造や相互作用システムという分野の新興を、このプロジェクトは示唆しています。
http://www.behnazfarahi.com/caress-of-the-gaze/
このプロジェクトでは、マルチ素材3Dプリンターを使った“第2の皮膚”を考えることで、未来のビジョンを追求しています。次の3つの課題に取り組みました。
まず1つ目は、最新の3Dプリント技術がどのようにファッション分野で活用できるのか。「Objet500 Connex 3Dプリンター」で使用できる材料の特性を探ることで、さまざまな柔軟性、密度をもつ合成素材が製造できるのみならず、1回のプリントで様々な方法や構造を用いて素材を合成することが可能です。
2つ目に、このプロジェクトは、形状記憶合金を使って、皮膚の動きを伝える筋肉システムとして作られたアクチュエーションシステムの可能性も示しています。
3つ目に、私たちの衣服がインタフェースとして、周囲の人とどのように作用しあうのか、視線追跡技術を使って研究しています。
私たちの皮膚が様々な内的・外的刺激に反応しているのと同じように、私たちの衣服も、刺激に反応したり、さらに親密さやプライバシー、ジェンダーやアイデンティティといった多くの社会問題にも対応することができます。
Caress of the Gaze from Pier 9 on Vimeo.
Natalia Arguello
Natalia Arguello
デザイン、芸術、テクノロジーの見事な融合だと思います。この分野の作品で、これほどまで人の心を惹きつける、魅力的な作品を見たのは初めてです。