「Decomposition of Materiality(マテリアリティの分解)」は、ある条件にさらされると、成長、分解、形態の変化を起こす生体材料によるエコシステムのシュミレーションを思索(スペキュレーション)するプロジェクトである。 ラボでの実験と開発の結果、この作品の素材は藻の抽出物とカイコの繭からとれるタンパク質(セリシン)から編み出された。これらは一般的に織物の生産時に出る工業汚水に含まれている生物ゴミで、瞬時に周囲の環境に反応し、アルカリ性の水の中では24時間以内に完全に分解される性質を持っている。 このプロジェクトではファッションプロダクトの生産におけるサスティナビリティ(持続可能性)に重点を置き、3Dテクノロジーを利用してテキスタイルの形状のモデルを生成、鋳造用の型をデジタルで製造、衣服のテキスタイルを展示した。この一連の流れは既存のファッション産業のサスティナビリティに欠ける性質とは対照的に、廃棄物を意識的に最小限に抑える事に役立つ。また、衣服の物理的な実体が消滅しても、デザインの本質は持続的かつアクセスしやすいデジタルの中に保存することもできる。このプロジェクトでは自然と技術両方の力を利用して、自然界の生命体の美しさを表現しており、物質がたどる生涯というコンセプトを通じて見る者に持続性のあるファッションの新たな方向性を問題提起している。 デザイナーとして私は常に世間一般のデザインの核となるもの、そしてその物質的なコンセプトを考察することに興味を抱いてきた。 セントラル・セント・マーチンズ大学で学び、ファッションスタジオで働いている中で伝統的なファッションデザインのプロジェクト開発の中でいかに多くの材料のゴミが生み出されるかを体験し、ファッションの分野で探究を行う中で、衣服について私たちが持つ常識理を疑うようになった。 生産プロセスが始まってもいないうちから衣服用トワール(実物大の模型)が大量に作られ、最終的には廃棄されるのが現実だ。市場に出回るテキスタイルのほとんどはリサイクルが出来ないものであり、ファッションの学生や卒業生である私たち若い世代もこれまでと同じやり方を続けるならば、汚染問題に加担し続けるということになる。 この衣服のデザインの大部分には3D技術を用いており、考えられうる完成形や手触りを同時に複数シミュレーションし、製品を披露する方法の一つとして3Dアニメーションを使い、デジタルの仮想ショールーム上で展示を行った。 この事によって、自然の中で分解される限りあるテキスタイルの実体は、終わりのないデジタルの人工物へと姿を変え、世界中からのアクセスを可能とする新たなテキスタイルのあり方を提示している。
Material Archive from Scarlett Yang on Vimeo.
Scarlett Yang
London, UK
スカーレット・ヤンは、ロンドンを拠点に触覚や触感、デジタル/バーチャルリアリティに焦点を当てた研究者/デザイナーである。 クチュールアトリエ、バイオラボ、デジタルファブリケーションラボで働いてきた彼女は、ファッション、デザイン、テクノロジーの交差点にある革新的なアプローチを深く研究/開発している。 セントラル・セント・マーチンズのBAファッション・レディースウェアを卒業した彼女のデザイン活動は、現在の環境面での緊急事態に対しての分解可能かつデジタルなソリューションのためのファッションや織物のライフサイクルを考察し、バイオと3DデザインをAR体験型の仮想環境で実装を試みている。
Webサイト:Scarletty.com
Scarlett Yang: concept development, bio designer, 3D designer, fashion designer.