YouFab Global Creative Awards 2014

デジタルファブリケーション領域のクリエイティブアワード
「YouFab Global Creative Awards 2014」の受賞作品を発表します。
27カ国、総計143作より選ばれた、21作の受賞作をご覧ください。

また、受賞作展示会をFabCafe Tokyoにて10/24-11/3まで開催します。

審査員の皆さんからコメントを頂きました。⇒コメントを見る

グランプリ

やどかりに「やど」をわたしてみる
やどかりに「やど」をわたしてみる
クリエイター:AKI INOMATA

ヤドカリに、3Dプリンティングで世界各地の都市をかたどった「やど」を渡し、ヤドカリが気に入れば引っ越してもらうプロジェクト。背負う「やど」によって見た目がすっかり変わってしまうヤドカリの習性と、国境、そして移民、難民、国籍の変更、自らが住む土地を選択することは可能か、といった私たちの抱えている問題とをリンクさせている。

準グランプリ

AgIC print - Silver-based Inkjet Circuit Printing and Instant Prototyping
AgIC print - Silver-based Inkjet Circuit Printing and Instant Prototyping
クリエイター:AgIC Inc.

市販のプリンタをハックし、家庭やオフィスでのラピッドプロトタイピングを可能にするマシーン。数百円にコストを抑えながら、数分で回路基板の印刷が可能。従来、回路基板の配線を描くには、特殊なソフトウェアを使う必要があったが、AgICの印刷では写真を印刷するのと同じである。ユーザーが使い慣れている図形描画ソフトウェアを使ってデザインができ、アイデアをすぐに形にできる。

入賞

  • 旅するニットマシン
    旅するニットマシン
    クリエイター:力石咲

    《旅するニットマシン》は、キャリーケースと編み機が合体したプロダクトであり、転がしながら旅をし出会った人を編み包んでいく、というアート活動です。車輪の動力を使って、移動した分だけ編み物ができ、旅先の人を編み包んでいきます。

  • Rootless
    Rootless
    クリエイター:Rootless Team - Fablab Torino

    人類によって初めて使用された複合素材である木材。CNCミリングマシンで簡単に扱えるこの木材という素材で、各地域のニーズに応えられる自転車を作りました。

  • Wooden Furoshiki
    Wooden Furoshiki
    クリエイター:Evdoxia Xexaki and Yuko Ishizu

    木材という素材に、新たな視点を当てることを目指したプロジェクト。 ”Wooden Furoshiki”は折りたたみ可能で、かつ三次元に自在に動き、家具やインテリアとして使えるプロダクトです。

  • COLORED MEMORIES
    COLORED MEMORIES
    クリエイター:ITAY OHALY

    カラフルな落書きの上に黒色の塗料を塗り、その表面を削って絵を描く「カラーエッチング」。CNCミリングマシンで実現することにより、遊び心・アナログ・子供の世界と、プロフェッショナル・デジタル・大人の世界を結び付けます。

  • “A Machine’s Perception” door handles
    “A Machine’s Perception” door handles
    クリエイター:Peli Design

    機械の利点と欠点を利用した、新しいドアノブをデザインしたシリーズ。3Dスキャンのエラーを探ることで、3Dスキャナーの認知世界をビジュアライズしました。

  • Boat of sun
    Boat of sun
    クリエイター:Vladimir Andreev Semenovich

    レーザーカッターを用いて作った、動く彫刻のアート作品。動力を伝達するギアは3Dプリントで作りました。太陽、風、波の調和をコンセプトとし、自然のつながりを表現すると同時に、エネルギー変換プロセスを表現しています。

  • Mechaneu v1 / 3D printed spherical gear system kinetic sculpture
    Mechaneu v1 / 3D printed spherical gear system kinetic sculpture
    クリエイター:Proxy Design Studio

    “Mechaneu v1”はアート作品として、3Dプリンティングの限界に挑戦した作品です。一体成型で制作され、精巧に組み合わされたギアと構造が特徴的です。1つの歯車を回すと、全体が回ります。

  • ASTERISK
    ASTERISK
    クリエイター:CHRISTINA SICOLI

    子供達にインタラクティブな学びの経験を提供するパズル椅子です。椅子を組み立てているときも、使用しているときも、子供達が主役となります。

  • Galatea
    Galatea
    クリエイター:drawn

    各地域でカスタムメイドした家具を作るために開発された、大きな3Dプリンター”Galatea”。椅子ならば、1時間で制作が可能です。

  • Droplet Lens Maker
    Droplet Lens Maker
    クリエイター:Rachel Watkins

    3Dプリンターを使用して作ったレンズ製造器。シリコンが製造器の穴を通って移動し、理想的なレンズの雫を形成します。硬化した雫をスマートフォンカメラの上におくと、顕微鏡として使用できます。

  • キッチン3Dプリンタ
    キッチン3Dプリンタ
    クリエイター:渡邊萌果

    多様な食材をフィラメントとして用いることのできる調理用3Dプリンタ。日本独自の調理用3Dプリンタとするべく、日本人の主食である「米」を主原料としたフィラメントを中心に据え開発した。

  • Zero Gravity Cocktail Glass
    Zero Gravity Cocktail Glass
    クリエイター:Cosmic Lifestyle Corporation

    3Dプリンターで作られたThe Zero Gravity Cocktail Glass (無重力カクテルグラス)は、宇宙飛行士や、宇宙に移民する人類が、地球外で液体を飲むためのグラスです。

  • Screw It Vase
    Screw It Vase
    クリエイター:David Graas

    3Dプリンターを用いて作られた「Screw Itコネクター」。ゴミとして捨てられるしかなかった12本のペットボトルを、美しく機能的な花瓶に変えます。

  • 3-PRING PRODUCT
    3-PRING PRODUCT
    クリエイター:タクトプロジェクト

    3-PRING PRODUCT(サンプリングプロダクト)は、お店で売っている既製品に、3Dプリンターで制作したオリジナル部品を組み合わせることで、全く違う用途で使用したり、より自分らしい使い方を追求する、デジタルファブリケーション時代の新しいD.I.Y.の提案です。

  • キャプチャード・デザイア
    キャプチャード・デザイア
    クリエイター:ご近所ものづくり同盟

    インターネットにアップロードされている類似画像を採取し、それらを用いて3次元形態を生成し出力するプロジェクト。人々の関心が対象物にあればあるほど、多くの画像がネット上に存在し、高解像度で3Dモデルが姿を現す。

  • x.pose
    x.pose
    クリエイター:Xuedi Chen

    “x.pose”は、3Dプリンターで制作された、送信データ量によって不透明度が変化する彫刻作品です。着ている人が送信するデータの量によって、不透明度がリアルタイムに変化し、肌が露出します。

  • 二次元以上三次元以下(小津安二郎の言葉より)
    二次元以上三次元以下(小津安二郎の言葉より)
    クリエイター:ささおまこと

    本来二次元である文字を三次元化する6点の連作。見る角度によって全く違うものになる文字という具象が抽象へと再び具象へと変化していく。

  • simple laser sintering
    simple laser sintering
    クリエイター:渡邉仁史

    3Dプリンタのひとつの造形方法であるSelevtive Laser Sintering(選択的レーザー焼結法)をレーザーカッターのなかで再現した簡易的な3Dプリントの機械です。サンプルでは砂糖を素材として宝石の形の3Dデータを出力しました。

  • kiami
    kiami
    クリエイター:秋吉浩気

    本作品では、日本の伝統工法を参照することにより、局所的分解・構築可能な木質自由曲面製作のための構築手法を提案している。日本という風土、さらにはその特性(制約)が醸成した「技術」の現代的応用を計った。

JUDGES' COMMENTS

伊藤穰一

伊藤穰一

YouFab Global Creative Awards のグランプリと準グランプリの作品は、アート、デザイン、エンジニアリングが“脱専門的”に美しく結びついた例だと思います。作品が持つ意味と、美しさ、デザインが自然に統合されたさまは素晴らしく、今日の私達に必要な考え方、ものの作り方です。遺伝子から宇宙まで、どんなスケールにも適用できるこのようなデザインの好例といえるでしょう。おめでとう!!

Hans Vermeulen

Hans Vermeulen

YouFab Global Creative Awards 2014を通して、デジタルファブリケーションがいかに様々な分野で活用され、人々に制作の機会を与えているのかを実感しました。143作の応募作は、本当に多岐にわたるもので、より持続可能な方法で安いコストでの製造を可能にする作品や、アップサイクルを提案するもの、一般の人にものづくりを身近に感じてもらえる作品などがありました。このように作品が多岐にわたっていたため、審査では比較が難しく感じるときもありました。多くの作品は、まだデジタルファブリケーションの一つの側面にだけ注目しており、デザインの質に改善の余地があります。しかし、全体としては、とても興味深いアイデアが集まり、審査員間で活発な議論が交わされました。

四方幸子

四方幸子

現行の技術の限界に挑戦するもの、新たなシステムやプロダクトの開発や提案、社会や技術(Fabも含め)の可能性を問いかけるアート・・・Fabの多様なアプローチをあらためて実感しました。 Fabはメディアや道具の創造やハッキングの実験場であり、社会に向けて批評や問いを投げかける場でもあります。それに加えて個人やグループが、企業を動かしていく新たな経済モデルが生まれつつあることを感じました。

追記: 受賞は逃したものの、遊びと批評を共存させ異彩を放つプロジェクトとして、ご近所ものづくり同盟の「キャプチャード・デザイア」挙げておきます。

山中俊治

山中俊治

今年のYouFab Global Creative Awardは、とても面白いアワードでした。新しいムーブメントへの議論を通して、私も自身もラディカルになることができました。グランプリ作品は、デジタルファブリケーションを使って、人間が自然物にフィットする物を製造できるという、新たな可能性を示しています。従来は、加工法や製造方法の制限のために、人間は自分たちが設計しやすいものを作ってきましたが、デジタルファブリケーションによって、自然界の営みに手を出せるようになったことを示唆しています。グランプリ作品そのものが、世の中にとって何を意味するかを考えさせる、深淵なプロジェクトだと思います。

齋藤精一

齋藤精一

アートは文化を切り開き、技術はそこに花を咲かせる。私にはそんなイメージがあります。今年のYouFab Global Creative Awardsにはそんなイメージがぴったりでした。技術に注目するフェーズを経て、それが道具になった瞬間、人は次の文化を必ず切り開きます。そんな瞬間を応募作品の審査を通じて、絶対に目撃したと思います。来年はどのように変化するのか楽しみです。