町を編む
By 宮田明日鹿(日本)
YouFab Global Creative Awards 2015 の受賞作品を発表します。
26ヵ国152作品の応募の中から選ばれた25作品の受賞作をご覧ください。
受賞作展示会開催! 2016/1/23 - 2/8 @FabCafe Tokyo
3Dプリンターで作られたワンピース。何千ものパーツで構成されるこのワンピースは、1枚に畳んだ状態でプリントされるため、人が組み立てる必要はありません。この作品は、デザイン、シミュレーション、デジタルファブリケーションを組み合わせることで、複雑でカスタマイズ可能なものを作る、という新しいものづくりの形を示しています。
本作品は、ユーザー一人一人に対応できるよう、学習アルゴリズムを使って制御される5軸CNCマシンです。ジェスチャーを使用し、感覚や身体と、デザインツールのリアルタイムなインタラクションが行われます。ユーザーの動きに合わせ、リアルタイムでデザインや製作を行えるサイバネティックスシステムです。
田中 浩也
慶應義塾大学SFC准教授、
FabLabJapan発起人
審査員抱負に「いかにも3Dプリンタやレーザーカッターを使ってつくりました!というような普通なものは見たくない」と挑発的な言葉を書いてしまいましたが、私の予想を遥かに超えるものが受賞したと思います。審査会を終えての感想は以下の3点にまとめることができました。
1. 「Fab」の魅力はやはり異質な要素の「混淆」や「衝突」なのであり、Fabを触媒として意外なもの(通常はつながらないと思っているものや、対極にあるようなもの、矛盾するもの)どうしをつなげているものは面白い。そこをつなげているのは、矛盾をねじ伏せて別の次元に昇華させてしまう、個の「ホリスティックな力」みたいなもので、その発露である「ジャンプ(飛躍)」にこそクリエイティビティが光っているように思えました。
2. 「Fab」では、新しい表現を生み出すために、技術のR&D(研究開発)とデザインの実践は切り離すことができないものであって、そのために複数のプロフェッショナルが集う小さなデザインエンジニアリングファームの役割がさらに大きくなるだろうと思いました。個人の作家でもなく、大企業の研究所でもない、「スモールチームの創造性」がFab時代にはますます問われると思います。ちなみに私は、成熟期に入った今、FabLabやFab施設が存在する意義は、「工作機械が使えること」ではなく「チームメンバー探し」になっていくのではないかという予感を持っています。
3. 「Fab」の出発点はやはり「実験」です。しかし同時に、プロジェクトを続けていくと、そこに詩的なもの、物語的なものが立ち上がり、それをまとい始める瞬間があると思います。それは、いわゆる広告代理店的な「後付け」の人為的な意味づけではなくて、プロジェクトの内側から自生的にストーリーが溢れてきて、それが作品からも滲み出てくる、といった状況です。私はこの真の意味での(見えない)「ものがたり」こそがFabの核心なのではないかと思っています。私たちがhttp://fabble.cc/を開発しているのもこの関心に端を発しています。
上記3点は、私の「Fab観」が色濃く反映されたものですが、これまでの「ものづくり」や「作品制作」と何が違うのか、というポイントにもなっていると思います。是非今後も、「つくってみた」とか「デジタル工作機器を使ってみた」どまりではなく、こうした深い意味でのFabの探求、掘り下げが続くことを期待します。
四方 幸子
クリエイティヴ キュレーター
企業や個人を超えアート、デザイン、クラフト、科学技術、産業、教育等が連結する実験場Fab、その精神は「誰もがハッカー」へと向かう創発的未来への投企といえるだろう。今回の応募では、完成度が高いものの、その意味で昨年と比べると突出した作品は多く見られなかった。審査では、グランプリと準グランプリでほぼ一致したものの、それ以外で意見が分かれた。結果的に4作品を「審査員特別賞」とすることで、Fabの多様性を伝えられたと思う。カテゴリーでは「マシン」に秀作が集中し(「MESH」、個人的には「FLUX All-in-one 3D Printer」)、「アート」では技術が先行し、コンセプトや実践面で広がりのあるものが少なかった(その中でユニークなのが「Knit the Town」「Artifacts」)。Fabシーンが拡張する中、その精神も内面化・無意識化されつつあるのだろうか、そうでないことを望んでいる。
齋藤 精一
ライゾマティクス
クリエイティブ&テクニカル・ディレクター
昨年から2年連続で、YouFabの作品を見させていただき、Fabの領域において沢山のことが今年も変わったと感じます。昨年は新しい機材や素材の進化が著しく、その新しい手法を使って全く新しい作品やプロダクトを考える「はじまり」でした。それに比べて2015年はできたばかりの手法を「いかに使いこなし、単純な目新しさだけではなく生活にどのように組み込んでいくか?」、もしくは「Fabにある様々なテクノロジーを1つの手法としてどのような新しいモノを作れるのか?」への挑戦だったと思います。本年選ばれた受賞作品群はそれが顕著にあらわれていると思います。長い時間これらの手法と向き合い、使い倒すことでまだまだ未知の領域を切り開いていくだけの可能性とエネルギーを感じました。今回は審査する立場でしたが、自分も一人のモノづくりに関わるものとしてそれを世界中のみなさんと一緒に探究したいと改めて思いました。
Luki Huber
プロダクトデザイナー
YouFabを通じて、興味深いプロジェクトをたくさん知ることが出来ました。受賞者のみなさん、おめでとうございます!今回のYouFab2015には、様々な分野のプロジェクトが集まりました。このコンテストの意義はそこにあります。アートから技術的なプロジェクトまでを同じ舞台で公開することで、さまざまな専門分野が混じり合っていくのを感じています。その意味でも、他の参加者の作品を見て、将来一緒にプロジェクトを行う相手を見つけることをおすすめします。今年のYouFabは終わりましたが、皆さんの製作活動はこれからも続きます。受賞者以外の方々も、YouFab2015に参加したことで新しいプロジェクトやパートナーを見つけられれば、きっと優れた賞を取ることができるでしょう。
Luke Yeung
Architectkiddプリンシパル
2015年は、3Dプリントでつくるファッションが到来した年なのか? YouFabの作品を審査した結果、答えはYESと言えるでしょう。今年の受賞作には、自動編み機から、カスタムできるジュエリー、アクセサリーのハックまで、デザイン、テクノロジー、ファッションをクリエイティブに融合した作品が多くありました。精度と質の高いプロジェクトが目立ちましたが、技術とツールが成熟した今の時代を鑑みるとこれは自然でしょう。また、今年の受賞作品をみると、改良を少しずつ重ね、プロセスを何度も繰り返すことで進歩するファッションやビジュアルアーツ、建築やデザイン分野で、デジタルファブリケーションを利用した秀でた作品が生まれたことがわかります。
Quake Hsu
Zeczec 共同設立者
今年のYouFab には、素晴らしい作品が多く集まりました。最近のデジタルファブリケーション技術の進化にともない、デジタル工作機械の実用的な使い方を多くの人が模索していることもあり、エントリーの増加にもつながりました。このことは、新たな産業革命への一歩だと考えています。 一方、技術的な方向とは異なる分野を模索する、アート志向のエントリーも数多くありました。機械の精度や、効率、正確性を賞賛するのではなく、欠陥やアクシデント、人間性に関心を持つ応募者の作品です。彼らは、機械とは異なる性質を作品に取り入れて、デジタル工作機械を使ったさまざまなアート作品を作り上げることに成功していました。このように、今年のYouFabでは、エントリーの幅広さと、洗練された作品に感動しました。受賞者の皆さん、本当におめでとうございます。すべてのFabberによる楽しい未来に期待しています!
四方 幸子
クリエイティヴ キュレーター
企業や個人を超えアート、デザイン、クラフト、科学技術、産業、教育等が連結する実験場Fab、その精神は「誰もがハッカー」へと向かう創発的未来への投企といえるだろう。今回の応募では、完成度が高いものの、その意味で昨年と比べると突出した作品は多く見られなかった。審査では、グランプリと準グランプリでほぼ一致したものの、それ以外で意見が分かれた。結果的に4作品を「審査員特別賞」とすることで、Fabの多様性を伝えられたと思う。カテゴリーでは「マシン」に秀作が集中し(「MESH」、個人的には「FLUX All-in-one 3D Printer」)、「アート」では技術が先行し、コンセプトや実践面で広がりのあるものが少なかった(その中でユニークなのが「Knit the Town」「Artifacts」)。Fabシーンが拡張する中、その精神も内面化・無意識化されつつあるのだろうか、そうでないことを望んでいる。
Luki Huber
プロダクトデザイナー
YouFabを通じて、興味深いプロジェクトをたくさん知ることが出来ました。受賞者のみなさん、おめでとうございます!今回のYouFab2015には、様々な分野のプロジェクトが集まりました。このコンテストの意義はそこにあります。アートから技術的なプロジェクトまでを同じ舞台で公開することで、さまざまな専門分野が混じり合っていくのを感じています。その意味でも、他の参加者の作品を見て、将来一緒にプロジェクトを行う相手を見つけることをおすすめします。今年のYouFabは終わりましたが、皆さんの製作活動はこれからも続きます。受賞者以外の方々も、YouFab2015に参加したことで新しいプロジェクトやパートナーを見つけられれば、きっと優れた賞を取ることができるでしょう。
Quake Hsu
Zeczec 共同設立者
今年のYouFab には、素晴らしい作品が多く集まりました。最近のデジタルファブリケーション技術の進化にともない、デジタル工作機械の実用的な使い方を多くの人が模索していることもあり、エントリーの増加にもつながりました。このことは、新たな産業革命への一歩だと考えています。 一方、技術的な方向とは異なる分野を模索する、アート志向のエントリーも数多くありました。機械の精度や、効率、正確性を賞賛するのではなく、欠陥やアクシデント、人間性に関心を持つ応募者の作品です。彼らは、機械とは異なる性質を作品に取り入れて、デジタル工作機械を使ったさまざまなアート作品を作り上げることに成功していました。このように、今年のYouFabでは、エントリーの幅広さと、洗練された作品に感動しました。受賞者の皆さん、本当におめでとうございます。すべてのFabberによる楽しい未来に期待しています!