FINALIST
ノイセンス
Category : GENERAL
By 川端 渉 x 右左見 拓人 (日本)
Noise;nse(ノイセンス)は、視覚ノイズから起こる変化を通して、さまざまな現実の側面を認識するための作品です。 車のエンジン音、カーテン模様のゆらぎなど。私達の身のまわりには、感覚に負荷がかかるノイズに満ち溢れています。 しかし、人にはノイズであっても、テクノロジーにとってはこのノイズは現実を認識する足掛かりとなります。テクノロジーだけが知りうるノイズの世界があるのではないか?テクノロジーは、私達が気付いていない視点を示してくれるのではないか? 本作品では、2枚の布(白光沢の布と伸縮性のメッシュ素材の布)に光の向きや距離、色を加え、視覚ノイズ(周期ズレや歪み)を発生させることで、植物の模様が変容するさまを表しています。布のまわりにはモアレ現象の縞模様が発生していますが、布の間に挟んだ植物には別模様が発生します。これは植物特有の凹凸からくるノイズの変化です。植物は生花と造花を織り交ぜて展示することで、生物と物質でノイズの変化が異なることが鑑賞できます。
私達の身のまわりには、人から取りのぞかれていくものが多くあります。ノイズ、錆、滲み、しわなど。人からは不要と思われるこれらも、テクノロジーではその性質を活用しています。人の環境から取り除かれるものに存在感を与えたとき、見慣れた日常はどのように変化していくのかを探究するために始めたプロジェクトの一環です。
2枚の異なる布から発生する視覚ノイズにより、生物や物質にどのような変化が起こるかを実験しました。 実験では、3Dプリントした多面体や切削機で切った半球、発砲スチロールを切削機でランダムに切り出し凹凸を作り出しました。その結果、視覚ノイズが上手く反映出来るのは人工物ではなく、自然の微細な凹凸のある葉や花でした。蝶蝶の羽には微細な凹凸があり、光が干渉することで羽の色を作り出している現象に似ています。 作品を発表した当初は、ノイズが植物に映っていると考えていましたが、調査を続けると影による影響がみえてきました。ノイズの影は、未だにこの現象を解明するに至っていません。
鑑賞者のスマートフォンに付いているカメラのLEDライトの光をあてることで、作品へ視覚ノイズを発生させていきます。身近にあるライトでも視覚ノイズを発生させることはできます。光をあてる向きや距離、色を変更することで、植物に発生している視覚ノイズの現象を変化させていきます。
3D printer, Cutting machine, CNC milling machine, 3D Modeling and Design Software
JUDGES, COMMENTS
-
福原志保
アーティスト
BCL 共同創設者 、Poiesis Labs CEO織物を織出す時に生じたエラーとして、波型模様となって現れたモアレ。意図されていなかった不規則性によって出来たうなりに、美が見出され、現在でも杢目柄や水面柄として使われています。産業革命時代に織機が生んだエラーであり、「テクノロジーだけが知りうるノイズの世界」でもあります。自然の葉や花を重ねることで、植物の表面にある微細な凹凸にモアレ現象が反映されることを発見した本作に、素直に「綺麗だな」と思いました。また、そういう作品が評価される必要を感じました。 最近、こういったテイストの作品はプログラムによって制作されることが多いですが、比較的アナログでそこが面白いと思います。