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フライングディスク × 3Dモデリング × 3Dプリンター 教育プログラム
Category : GENERAL
By 寺田天志 (日本)
フライングディスク×3Dモデリング×3Dプリンター教育プログラムは、「身体性」と「デジタルの融合」を遊びを通して学ぶ、教育プログラムです。具体的には、フライングディスクを題材に3Dモデリングと3Dプリンティングを掛け合わせたプログラムとなります。
フライングディスクを題材とした理由は、自分自身がフリースタイルフライングディスクのプレイヤーであり、ユニークな投げ方やトリック、遊びの創造性を教えることができると考えたからです。小学生の時期は、身体を使って空間把握やイメージ力、体感覚を鍛える時期のため、頭で考えるより身体で感じることが重要と位置づけました。
フライングディスクの単純な形状が変化すると、飛び方が変わることを体感させることと、3Dモデリングや3Dプリンターを通じて遊び道具は自分で作れる、という成功体験を生徒に感じさせることが目的の1つです。教育プログラムを開催するための「場」は、自分が住んでいる過疎地域の公立小学校で、 総合授業にデジタルファブリケーションの授業を取り入れて頂きました。
今回の授業を企画したきっかけは、5、6年前に公園で、20人くらいの子供たちが全員下を向いてゲームをしている場面に遭遇したのがきっかけです。ネットワーク内のチャットで会話をしているのか、現実世界でのコミュニケーションが全く見られませんでした。見た場面が悪かっただけで体を動かしたり、会話をしたりして遊んではいると思います。しかし、その場面が「デジタルに遊ばれている」という印象を受けました。
体を使って思いっきり公園で遊んでいた自分達の時代とのギャップを感じたと同時に、デジタルを操りながら身体性をもって遊べるということを自分の経験から教えられるのではないかと思い、この授業を考案しました。
自分の住む過疎地域の小学校の授業で特別授業が開催できるよう、学校側と交渉して開催が決定しました。 ワークショップのように一度きりではなく、小学校の義務教育内で毎年開催することを目標としました。教育委員会にも協力を頂き、今年で3年目になります。今では、3Dモデリングやデジタルファブリケーションが、この小学校では身近なものになりました。 授業では、PCは一人一台ではなく、2-3人で一台とし、生徒同士がコミュニケーションしながら教えあう手法をとっています。 過疎地域のため生徒数が少なく、モデリングという概念を教えるには適していました。フライングディスクで体を動かした後にモデリングの授業をするので、生徒の積極性も上がりました。
今回考案したプログラムでは、生徒たちが3Dプリントで作ったフライングディスクで「浮遊感」を身体で体感し、空間把握やイメージ力、体感覚を鍛えます。フライングディスクの形状をモデリングするという事は「浮遊感」という感覚のデザインをするということにも繋がります。 生徒達は相手が投げるフライングディスクに時が止まるかのような感覚を覚え、さらにそれをキャッチしたいという欲求が生まれます。それが、フライングディスクと空間の狭間に被写界深度を発生させ、相手が投げたフライングディスクの様に自分が浮いてるかのような錯覚を覚えます。 その不可思議な「浮遊感」とはなにか。 デジタル技術を取り入れることによりその浮遊感がどのように生まれるのかを3Dモデリングやデジタルファブリケーションを通じて解析、実際に作り出し、生徒たちに思考させます。
3D printer, Laser cutter, 3D Modeling and Design Software
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Julia Cassim
京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab. 特任教授このプロジェクトはゲーム世界にとらわれた世代をそこから引き離し、いかにリアルな場と再びつなぐことができるのかという困難な課題と向き合っています。プロジェクトの総合的で実用的な気づきに、深く感銘を受けました。初等教育のカリキュラムにも採用される可能性も示されています。