FINALIST
バイオロジカル・テイラーメイド
Category : STUDENT
By 川崎和也 (日本)
バイオロジカル・テイラーメイドは、「もしも、未来の仕立て屋がバイオハッカーになったら」という未来像のもと、バクテリアセルロースを人体スケールへと培養し、本素材を3Dデザインのプロセスを経由して制作したテイラードスーツです。実験環境において、テクノロジーを使って生物をコントロールする「バイオハッキング」に着目し、素材の新規性のみならず、バイオマテリアルを前提としたのファッションデザインの新しい表現を探求しています。
バイオロジカル・テイラーメイドは、バクテリア由来のテキスタイルを利用した新しいファッションの表現を、「かたち」「いみ」「つくりかた」の観点から探求することを目的としています。
ⅰ Fashion、ⅱ Digital Fabrication、ⅲ Bio の3つのプロセスをパラレルに実施することで、新しい衣服造形方法の開発を試みました。
ⅰ Fashion: カスタムメイドの採寸・製図・裁断の過程を経て、テイラードスーツを制作。伝統的なテイラーメイドが本作品のアナロジーとなる。
ⅱ Digital Fabrication: 着用したスーツの3Dデータをスキャンし、コンピュータ制御の切削マシンで服の「型」を制作。3Dデザインのプロセスは、人体に美しくフィットした衣服のサイズやシェイプを表現することができる。
ⅲ Bio-Hacking: バイオマテリアルSCOBYが持つ代謝システムは、発酵の原理を利用してバクテリア由来のセルロースを生成することができます。バイオセルロースの柔軟な形状は、素材を型の上で乾燥させることで、スキャンデータを元にした女性の曲線美を表現することができます。
3D printer, CNC milling machine, 3D Modeling and Design Software, 2D Design and 2D CAD Software
JUDGES, COMMENTS
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福原志保
アーティスト
BCL 共同創設者 、Poiesis Labs CEOバイオとマテリアルの融合は今注目を集めている分野のひとつですが、この作品は新しい素材が社会やデザインに与えるインパクトを重要視していると思います。デザイナー自身がマテリアルから自宅で製造するこの作品は、200年間変わらず、独占的な風潮の産業であるテキスタイル業界に対して、風穴を開ける行為として考えられるのではないでしょうか。 今の社会では、大量生産向けにS・M・L・XLなどの標準化されたサイズが規定されていますが、この作品が提案しているのは、新しいカスタムメイドであり、新しいオートクチュールです。決められたサイズの中から選ぶ必要がないとすると、どのようなことが可能になるのでしょうか。ファッションがもつ社会的意味も探求し、さらなる進化に期待したいと思います。