Category : ART
By 宮田明日鹿(日本)
昭和30年に全盛期といわれた家庭用編み機。本プロジェクトでは、1990年代に生産された家庭用電子編み機を改造し、パソコンからデータを送り、作品を制作しました。
この作品は、2015年7月18日〜8月23日の期間中に、参加型コミュニケーションアートとして制作されました。「町を編む」が行われた場所は、岡山県倉敷市玉島。江戸時代から栄えた歴史ある町です。玉島の町を歩き、風景の一部を切り取った写真や、玉島に住む方に取材をし、思い出の写真をお借りしました。写真をニットサイズに変え、編み、身につけるものに仕立てて、最後には元の写真の風景の場所に行き、作品を身につけて撮影。全てワークショップ形式で行われました。
本作品では、町の風景以外に、地域に住む方に昔の町の風景や、思い出の写真をお借りしました。80代のおばあさんの幼少期の思い出や、当時の出来事などを聞きました。話には必ず、戦争の話が出てきました。私自身、戦争の話を直接聞き出したり、聞く機会など今までありませんでした。今回のプロジェクトで、その話を聞き、作品として記憶を残す作業が出来ることを実感しました。その中で見えてきたことは、編み機が、コミュニケーションのツールともなる機械であったこと。今後は、「町を編む」シリーズを海外に展開し、世界どこでも共通する編み物文化を切り口に作品を展開していきます。
http://asuka.miyataamiki.com/
ブラザー社の電子家庭用編み機KH940の外部装置である、フロッピーディスクのコネクタを利用し、USBケーブルを改造してフロッピーディスクの仮想ソフトを製作しました。改造は、Maker Lab Nagoya のMatsuoka氏の協力で実現されました。
編み機もデジタルファブリケーションに含まれることに衝撃を受け、編み機の勉強を始めたことがきっかけで現在に至ります。
田中浩也
田中浩也
まちの記憶を写真で収集し、それを意図的に解像度を下げたビットマップ(デジタルデータ)に変換、そしてニッティング・マシンを用いて「編み物」まで落とし込まれた結果の数々を見ていると、デジタル・ファブリケーションの本当の価値は「異質なものをつなげる」触媒性だという事実を改めて思い出させられる。
そして、いわゆる(よくある)「作品」としての自律性や完結性とは対極にある、オープンなプロセス、未完成性、複数性などが詰め込まれた作品であり、正しく「編み物」の文化自体を現代的にアップデートしようとする意欲的な活動なのではないかと評価したい。